2022年10月15日(土)13:30~16:30
令和4年度 量子医療推進講演会『量子が拓く未来の社会』をサンメッセ鳥栖大ホールにて開催しました。
今年の講演では、中性子線を活用した画期的ながん医療や、実現化に向けて動き始めた宇宙惑星での居住など、量子科学技術がもたらす未来の社会について「鈴木実先生」と「髙橋昭久先生」にご講演いただきました。
【講演内容のご紹介】
【講演1】「加速器BNCTの現状と将来展望」 講師 鈴木 実 氏
日本中性子捕捉療法学会(JSNCT)会長
京都大学複合原子力科学研究所粒子線腫瘍学研究センターセンター長
<講師略歴>
1990年 京都大学・医学部卒業
1990年~1995年 京都市立病院・放射線科勤務
1995年~1999年 京都大学大学院・博士課程(京都大学原子炉実験所)単位取得退学(2001年 博士(医学)取得)
1999年~2002年 近畿大学医学部放射線医学教室病院講師
2002年~2008年 京都大学原子炉実験所・医療基礎研究施設助手(2004年~京都大学複合原子力科学研究所・粒子線腫瘍学研究分野助教
2003年~2004年 ミネソタ大学(C.W.Song 先生の研究室)に滞在
2008年~2013年 京都大学複合原子力科学研究所・中性子医療高度化研究部門特定准教授
2013年~現 在 京都大学複合原子力科学研究所粒子線腫瘍学研究センター長
<主な学会活動>
日本放射線腫瘍学会代議員、日本中性子捕捉療法学会学会長
International Society of Neutron Capture Therapy:Executive Board
<主な受賞歴>
2005年日本放射線腫瘍学会・梅垣賞
2015年日本放射線腫瘍学会・阿部賞
<講演概要>
近年、物理エネルギーとそれに反応する薬剤を組み合わせたChemical Surgeryが注目を集めている。本講演で取り上げるホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron CaptureTherapy, 以下BNCT)は、物理エネルギーである中性子線と反応して、2つの重粒子に分裂するホウ素(10B)を含む薬剤の組み合わせで治療が成立している。従来、BNCTにおける物理エネルギーである中性子線を安定に取り出すことが可能な装置は、原子炉のみであったが、近年、病院併設の小型加速器によるBNCT照射装置が開発され、医療機関において、頭頸部がんの治療が開始されている。本講演では、原子炉BNCTから加速器BNCTへの展開と、加速器BNCTが切り拓くがん治療の展望を紹介する。
【講演2】「量子科学技術と宇宙医学」 講師 髙橋 昭久 氏
宇宙惑星居住科学連合代表
群馬大学重粒子線医学研究センター生物学部門教授
<講師略歴>
1991年 東京学芸大学大学院教育学研究科理科教育専攻修士課程(生物)修了
1991年~1995年 大塚製薬株式会社大津研究所
1995年~2001年 奈良県立医科大学医学部医学科生物学教室・助手
2001年~2010年 奈良県立医科大学医学部医学科生物学教室・講師
2011年~2015年 群馬大学先端科学研究指導者育成ユニット・准教授
2015年~現 在 群馬大学重粒子線医学研究センター 生物学部門・教授
<主な学会活動>
日本宇宙放射線研究会会長、国際放射線神経生物学会評議員、日本放射線腫瘍学会生物部会幹事
<主な受賞歴>
2016 年 日本宇宙生物科学会 学会賞受賞
2020/2022 年 One of the Most Valued Reviewers(Elsevier, Life Sci. Space Res)
<講演概要>
人類は,再び月へ,火星へと有人活動の準備をすすめている。いよいよ民間の宇宙旅行も始まった。より遠く、より長く、宇宙への“人類の生存範囲の拡大(宇宙に生きる)”の夢が実現する時代へと移行しつつある。しかし、宇宙は地上と異なる重力環境、閉鎖環境、宇宙放射線環境のため、非日常的な極限的ストレスに曝される。夢の実現のためには、量子科学技術を始め、極めて多岐にわたる科学的知識と種々の技術を結集することが求められている。本講演において、宇宙開発の今と、宇宙医学についての我々の取組みを紹介したい。