ホウ素薬剤開発の現状 ~基礎研究より橋渡し研究へむけて~
岡山大学 准教授
中性子医療研究センター 薬剤開発・動態解析部門
道上 宏之 氏
BNCTの現状として、以下のごとく先進例の状況紹介があった。
- 2020/3/12 加速器を用いた BNCT 治療システムおよび BNCT 線量計算プログラムの 医療機器製造販売承認の取得(住友重機械工業)
- 2020/3/25 ステボロニン点滴静注バッグ 9000mg/300mL 製造販売承認 (ステラファーマ株式会社) 切除不能の進行・再発の頭頚部癌への承認 (再発悪性神経膠腫は現在治験中・医療申請前)
また、先進地域として、関西 BNCT 共同医療センター(大阪府高槻市:大阪医科大学内)、及び南東北 BNCT 研究センター(福島県郡山市)の紹介があった。さらに現在治験中の施設として、国立がん研究センター (対象:悪性黒色腫・血管肉腫)、海外(治験準備中)の例としてヘルシンキ大学病院(HUS:フィンランド、再発頭頚部癌)が紹介された。
一方、ホウ素薬剤開発に関して、現在は加速器中性子源が整備されてきており、今後の鍵はホウ素薬剤開発であることが力説された。すなわち、理想的ホウ素薬剤の条件として1)分子内ホウ素含有率が高い、2)安全性が高く(500mg/kg 投与下)、水溶性高い、3)腫瘍選択性が高い・すべての腫瘍へ均一導入(腫瘍組織・腫瘍細胞) 20ppmB 以上が可能、4)腫瘍細胞内部への取り込み能あり(核への移行)、5)簡便な合成方法・シンプルな薬剤デザイン(大量合成へ対応)、6)薬物動態可能なイメージング製剤にも対応(生体内ホウ素濃度評価)、及び7)細胞内滞留性が高い、等がある。
さらに、ホウ素薬剤開発の2つの方向性として、1)高分子 DDS 型、2)低・中分子型、が解説された。今後のBNCT への新規ホウ素薬剤の位置付けとして、BPA との併用による複数ホウ素薬剤使用と疾患によるホウ素薬剤の使い分けについて解説された。