2021年1月16日
令和2年度 第4回量子医療研究会 テーマ:「BNCTおよび光免疫療法の最前線」
ステラファーマ株式会社 代表取締役会長
BNCTにおいてはがん細胞に取り込まれやすいホウ素化合物をつくる技術が課題であった。核分裂反応を起こし易いのは、同じホウ素のなかでもBoron-10という同位体だけなので、これを自然界のホウ素から高濃度で濃縮することが必須である。
自然界に存在するホウ素は、質量数10の10Bと、質量数11の11Bが安定に存在し、10Bは約20%しか含まれていない。BNCTでがん細胞を破壊するために利用する中性子による核分裂反応は10Bのみが起こす反応であり、11Bでは起こらない。
ホウ素の同位体濃縮技術はこの10Bのみを高濃度に分離・濃縮するものであり、国内では親会社であるステラケミファのみが保有するコア技術である。ステラファーマ(株)は、この濃縮技術を持つステラケミファ(株)の100%子会社として2007年6月に設立されたフッ素化合物のベンチャー企業であり、この製剤によりBNCTは大きく前進したと考えられる。
その後、2016年3月 株式会社産業革新機構(現 株式会社INCJ)及び住友重機械工業株式会社を引受先として、第三者割当の方法により増資を実施し、2012年11月からSPM-011(ステラファーマ製BNCT用ホウ素剤)の日本における脳腫瘍(再発悪性神経膠腫患者)第Ⅰ相臨床試験を開始した。2014年1月からは 公立大学法人大阪府立大学BNCT研究センター内(大阪府堺市中区)に研究所を移設し開発を加速している。2014年からはSPM-011の日本における頭頚部癌(切除不能な局所再発頭頚部癌及び切除不能な局所進行頭頚部癌)第Ⅰ相臨床試験を開始している。
ホウ素製剤に関しては、2020年3月にBNCT用薬剤ステボロニン®(SPM-011)について「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果とした製造販売承認を取得し、同年5月よりBNCT用薬剤ステボロニン®の販売を開始している。ステラファーマ(株)は、現状ではBNCT専用の医薬品開発に必要な技術を備えた世界で唯一の企業である。 現在、頭頸部癌用として製造販売承認取得し、上市(販売名:ステボロニン点滴静注バッグ 9000 mg/300 mL)している。
また、再発悪性神経膠腫については国内第Ⅱ相試験実施中(先駆け総合評価相談実施中)である。再発悪性髄膜腫に対しては国内第Ⅱ相試験実施中で、また悪性黒色腫及び血管肉腫に対しては国内第Ⅰ相試験実施中である。