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2021年1月16日
令和2年度 第4回量子医療研究会 テーマ:「BNCTおよび光免疫療法の最前線」
講演: (株)ハイメディックが取り組むがん検診・がん治療~大切な人をがんで亡くさない社会を目指して~

BNCTの臨床応用・治験状況について

伊丹 純 氏

国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長

講師は国立がん研究センター中央病院放射線治療科科長として、小線源治療、悪性リンパ腫の放射線治療、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)、放射線管理を担当している。 2016年3月、国立がん研究センターは、同中央病院に設置した世界初の病院内設置型BNCTシステム(原子炉を必要としない加速器で中性子を発生させる装置)を開発中であり、システムの総括責任者の立場から開発の現状とBNCT治療の現状について紹介された。

特に、主として人体の表層部等の浅い部分しか治療が行われていないBNCTについて、より深部の膵がん等への応用などについて解説された。国立がん研究センター中央病院放射線治療科のBNCTシステムは、株式会社CICS(同社の主要株主は(株)ハイメディック)と共同研究で開発を行っている。

2020年11月には中性子照射が開始され、原子力安全技術センターの施設検査も合格し、現在は治験の実施に向けて中性子の物理データ、装置の耐久性などを検査している。今後加速器BNCTが実現することにより病院設置型BNCTとしてより多くの患者の治療に応用され、腫瘍学におけるその意義が科学的に証明されると考えている。

原子炉ではなく加速器で熱外中性子を照射使用という試みは我が国がトップを走っており、すでに住友重機械工業は京都大学原子炉実験所との研究でサイクロトロンベースのBNCT用加速器を開発して、京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)と南東北病院(福島県郡山市)に導入し、現在治験を行っている。

一方、国立がん研究センター中央病院に設置されたBNCTシステムでは垂直ビームを用いる世界で唯一の装置である。その利点を生かして術中照射などにも取り組み、6-7cm以上の深部にある腫瘍(例えばすい臓がん)に対してもその治療可能性を追求することを検討している。BNCTが、できるだけ多くの患者さんに開かれた治療となるようにしっかりしたデータを集めて治験に取り組むことを考えている。

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